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小川洋子「鍾乳洞の恋」。首の痛みから鍼灸院に通い始めた女性は、院長から音読のボランティアを依頼される。それは「オペラ座の怪人」のパンフレットだった。短編小説。
櫻木みわ「コークスが燃えている」。炭鉱町出身の〈私〉は独身で四〇歳を目前に非正規で働いている。ある日、かつて弟と一悶着あった女性から突然食事に誘われて……。新鋭による中編小説。
佐々木敦「映画は存在しない──マルグリット・デュラスの映画論」。デュラスを語る際に陥りがちな紋切型を回避しつつ、彼女の映画作品を解析する、注目の論考。
アフマド・サアダーウィー+酒井啓子+山本薫「別のレベルの「現実」を求めて」。話題作『バグダードのフランケンシュタイン』を著したイラク人作家と研究者との鼎談。
【特集 東日本大震災10年】
玄侑宗久「火男おどり」。被災地出身で復興住宅に住む〈猪狩の爺〉が、地元住民の〈根本さん〉と二人でやってきた。賽銭箱に思わぬ大金が入っていたというのだが……。短編小説。
沼田真佑「於浅虫」。初めて訪れた青森の地で海を望む温泉街を散策する〈私〉が思い出すのは中学の頃のある同級生だった。短編小説。
小林エリカ「野鳥の森1F」。二〇一七年春、〈私〉は東京電力福島第一原子力発電所構内を訪れた。そこはかつて「野鳥の森」と呼ばれた場所だった。短編小説。
木村朗子「震災後文学論2021──あたらしい文学のほうへ」。多和田葉子、桐野夏生、瀬尾夏美、いとうせいこう他、ここ数年の作品を読み解く最新の震災後文学論。
鳥原学「〈3・11〉が問いかけた「写真家」の立場」。写真家たちは被災地域の抱える困難の多様さを私たちに伝えてきた。その貴重な取り組みについて考察。
木村友祐「きわに暮らす者たちの十年」。郷里・青森県八戸市の港町で暮らす従兄弟が語る震災とその後。そこから見えてくるものとは?