激動の歴史絵巻
沢美也子
2010年 3月号

彩の国シェイクスピア・シリーズ第22弾『ヘンリー六世』
演出/蜷川幸雄 作/W・シェイクスピア
翻訳/松岡和子 構成/河合祥一郎
埼玉:2010年3月11日〜4月3日
彩の国さいたま芸術劇場大ホール
問:彩の国さいたま芸術劇場0570-064-939
http://www.saf.or.jp
■人間を超える存在としてのヘンリー
シェイクスピアの『ヘンリー六世』は三部からなる超大作だ。全部上演すると約九時間にもなる。昨年の秋、新国立劇場で上演され話題を呼んだばかりだが、今年は彩の国さいたま芸術劇場での公演で、演出は巨匠・蜷川幸雄。こちらの『ヘンリー六世』は、大胆なカットを施して、約六時間の二部作となっているのが大きな特徴だ。その構成を担当したのが英文学者の河合祥一郎。シェイクスピア作品の新訳を角川文庫から刊行中で、『謎ときシェイクスピア』など、著書も多い。『リチャード三世』を翻案して野村萬斎演出・主演の『国盗人』を、『ANJIN』では共同脚本として参加など、翻訳を越えた活動にも積極的だ。
今回の『ヘンリー六世』は、松岡和子の新訳から河合が場面ごとカットしたり、長大な台詞を短くしたり、また一部、場面を入れ替えて上演台本を作成している。
「松岡さんに、こんなにカットしてと、怒られるかと思いましたが(笑)、『いいね! ジェットコースターみたいだね』とおっしゃっていただきました。作業はとても楽しかったです。『ヘンリー六世』はシェイクスピアの最初の作品、つまり、若い時に書いている。若書きだから、取っ散らかっていて、いろいろと整合性がないところもある。もし、シェイクスピアが再演しようと思ったら、必ずテキレジ(台本の見直し)をやっているはずなんです。それで、私が彼に代わって(笑)、手を加えたわけです。長い台詞を切っているのも、時間短縮のためばかりではなくて、初期の作品だからとても修辞に凝っていて、そのレトリックのために台詞が長くなっているんです。『ハムレット』以降、変化しているんですが。だから、そのスピリットで見直せば、切れるところが見えてきます。無駄を省いて、『ヘンリー六世』の真髄を取り出す作業を心がけました」
『ヘンリー六世』は、ジャンヌ・ダルクが活躍する英仏百年戦争から、ヨーク家とランカスター家の王位争いである薔薇戦争までの五十年間を描いている。ヘンリー六世は戦乱の時代にあって闘いよりも平和を求めた人物で、王妃マーガレットのほうが、よほど強気で野心も大きい。今回はヘンリー六世に上川隆也、マーガレットに大竹しのぶ……
撮影/小檜山貴裕