演出家
鈴木裕美
2011年 4月号

「生=ライブであること、そこに演劇の最高の美を感じます」
鈴木裕美さんはライブアートである舞台と、それをつくり上げる人々をこよなく愛する演出家だ。
「だから小説家の方はもっと戯曲を書けばいいのにと思ってしまう。だって大の大人が一字一句暗記しますからね。読み込むどころの騒ぎじゃなく、丸暗記。才能ある役者たちが自身の体や声を使って必死の努力をして、書かれている以上のことを時にやってくれる。スタッフも含めて何十人もが、何ヶ月にも亘って議論を戦わせる。みんなに構ってもらえる、こんな幸せな文学は他に見当たらない。
いい戯曲を書けば、たとえば五百年後の人間が時を超えて、国や言語も超えて、そこに描かれた人間とコミュニケートできるタイムマシンのような装置になる。誰かに爪痕を残す手段としてこれほど素晴らしいものはない。それをイメージできれば、戯曲を書くことがどんなに幸せなことかわかると思うんです」
鈴木さんは、一九八二年、日本女子大学在学中に脚本家である飯島早苗さんと劇団・自転車キンクリートを結成、以降同カンパニー公演のほとんどを手がけてきた。……
撮影/中野義樹