映画 越川芳明さん、野崎歓さん、立田敦子さんが、 月代わりでお勧めの映画を紹介します

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真の指導者の資質 立田敦子

2010年 3月号

『インビクタス/負けざる者たち』

『インビクタス/負けざる者たち』 脚本・監督・製作/クリント・イーストウッド

(c) 2009 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.

 伝記映画は、興行的にいえばヒットの確率の高い人気のジャンルだが、作品の質ということでいえば、必ずしも傑作ばかりではない。生い立ちから生涯を描こうとするなら、約二時間という映画の尺には収まりきらず、無理やりやってのければ、表層をなでただけの味気ないダイジェストになりかねない。ならば、大河ドラマのようにじっくりと時間をかけて描くほうがいい。

 ネルソン・マンデラの人生もとうてい二時間で描けるようなものではない。若き弁護士だったマンデラは、一九四八年に法制化されたアパルトヘイトへの反対運動に参加し、六二年に逮捕、九〇年に釈放されるまで約二七年間囚人として人生を送った。そして、釈放から四年後の九四年四月に、南アフリカ史上初めて全人種が参加する選挙が行われ、マンデラが大統領に選任された。五年の任期を経て引退し、九一歳となる現在は、ユネスコ親善大使に就任している。ノーベル平和賞受賞者でもあるこの南アフリカで初の黒人大統領の人生は、波乱に満ちていてどこをとってもドラマになりそうだ。だが、『インビクタス/負けざる者たち』は、大統領就任から九五年の南アフリカで開催されたラグビー・ワールドカップに焦点を当てて描かれている。アパルトヘイト体制を平和的に終結させ、民主主義に導いたことがマンデラの最大の功績である。アパルトヘイト政策が法的になくなっても実際は白人と黒人が真っ二つに分かれていた国をひとつにまとめたその手腕を“マディバ・マジック”と呼ぶ人がいるそうだが、もしそれが“魔法”だったとしたら、この映画は、まさに魔法の杖が振り下ろされる瞬間を、潔くすぱっと切り取ることに成功している。

 大統領に就任したマンデラは、白人たちを疎外するのではなく、彼らを受け入れることでバラバラになった国をひとつにしようとしていた……

続きは本誌で

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