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「喜劇王の人生が凝縮された書」チャールズ・チャップリン/デイヴィッド・ロビンソン『小説ライムライト チャップリンの映画世界』 町山智浩

チャールズ・チャップリン/デイヴィッド・ロビンソン『小説ライムライト チャップリンの映画世界』

本体価 3,500円
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『小説ライムライト』という書名だが、小説は本全体の約半分にすぎない。それ以外は、チャールズ・チャップリンの監督作『ライムライト』(一九五二年)の製作過程の検証に費やされ、この映画にチャップリンの人生が凝縮されていたことを解き明かす。

 一九一六年、サイレント映画で身体芸術を追求するチャップリン(当時二七歳)は、バレエの天才ニジンスキーの公演を観て、鬼気迫る演技に感激し、ダンサーを主人公にした映画を構想し始めるが、時が経ち、ダンサーを演じられる年齢を超えてしまう。

 いっぽう、チャップリンは、二〇世紀初めのロンドンの寄席芸人(ボードヴィリアン)の物語を考え始める。彼の父母も芸人で、幼い頃、寄席のステージに上げられたのがチャップリンの始まりだ。人生の終わりを感じた彼は自分の原点に立ち返ろうとしたらしい。

 この二つの企画が一つになる。一九一〇年代のロンドンにあったエンパイア劇場で、実際にバレエとボードヴィルが一緒に上演されていたからだ。

 チャップリンは、挫折した若いバレリーナのテリーと、落ちぶれた老コメディアンのカルヴェロの物語を小説の形で書いた。これが小説『ライムライト』だ。

 映画は、テリーの自殺未遂で始まるが、小説には、父親の没落や、姉の売春など、自殺に至る陰惨な背景が生々しく描かれる。実際に撮影もされたが、チャップリンは最終的にカットしてしまった。

 チャップリンの怒りも、小説には残っている。たとえば、「あなたは人間が好きな人だ」と言われたカルヴェロは、一人ひとりは好きだが、群衆、観客になると違うと語る。「私はだんだんと彼らが恐ろしくなった……無慈悲で、予想のつかないやつら……まるで頭のない怪物だ」「刺激さえ与えれば、どんな方向だって向く」

 そのセリフには、チャップリンが齢六〇を迎えて「時代遅れだ」と言われていたことや、赤狩りで共産主義者と疑われ迫害された憤りが込められている。

 チャップリンは『ライムライト』をハリウッドで撮影した。一九一〇年代のロンドンがセットで再現された。そしてロンドンでの完成披露試写に向かったチャップリンにアメリカ政府は再入国を禁止した。その上映さえ、米国では愛国者を自任する人々の反対で中止された。

 そんな大衆への憤りを、チャップリンは笑いで返す。カルヴェロはこう言う。「あのシラミ野郎どもを憎むのと同じくらい、やつらが笑うのを聞くのが好きなんだ!」

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