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「師とは、父とは」原田マハ『リーチ先生』 青木千恵

原田マハ『リーチ先生』

本体価 1,800円
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 バーナード・リーチ、柳宗悦、濱田庄司、河井寛次郎、富本憲吉、武者小路実篤、志賀直哉――。有名な芸術家が続々登場して、胸躍る物語だ。ただし、プロローグにはこんな言葉が記されている。〈「有名」だからいい、というわけじゃない。むしろ「無名」であることに誇りを持ちなさい〉〈誰それという芸術家が創った、だからいいものなんだ、という考え方は、民藝運動では通りません〉

 イギリス人の陶芸家、バーナード・リーチの生涯を描いた長編小説だ。一九〇九(明治四十二)年、高村光雲邸で書生をしていた沖亀乃介は、日本の文化を学びに来日した二十二歳のリーチと出会う。以降、亀乃介の目を通し、リーチと芸術家たちの交流が描かれていく。植民地・香港で生まれたリーチは、幼少期を過ごした東洋の国々に憧れを抱き、東洋と西洋の芸術の融合を志す。

 プロローグは一九五四年、大分県の小鹿田で焼き物を学ぶ高市が、一年前に死んだ父・亀乃介が、かつてリーチの助手だったと知る場面で始まる。亀乃介がやがてリーチと別れ、九州で死ぬと冒頭で分かるので、そうなるまでのいきさつが知りたくて、物語に引き込まれる。異なる時空を結んで読者をつかみ、謎を保ちながら進む語りが、著者は本当に巧い。

 柳宗悦らとの邂逅が描かれ、白樺派や民藝運動の意味にも迫る。プロローグで、リーチは「偉い先生」として現われる。だが彼も無名の若者だったのだ。〈「白樺」は、個性をもった若き芸術家たちの集合体だ。「烏合の衆」になってしまうのではなく、それぞれが違った色をもち、けれど調和がとれているのが、いちばんなのだ〉。まさに森である。高さも樹齢も違う木があって、多様な動植物がいた方が森は豊かで、調和しているのだから。また、私生児として生まれた亀乃介が、リーチを慕って成長する姿もいい。父と子、師と弟子の物語でもある。

〈耳で聞くこと。頭で理解しようとしないこと。……誰かと会話を成立させたいと、強く願うこと〉。読みやすいエンタメ小説だが、アメリカの大統領選でリベラルが敗れた今、示唆に富むところも多いと思う。百年前の知識人は純粋で、私利私欲ではなかった。昔がよかったというわけではなく、改めて知っておきたい生き方や思想が物語の中にあるのだ。

 たとえば河井寛次郎についてこう記されている。〈有名になればなるほど、彼は無名を重んじるようになった〉。芸術や芸術家の人生を通して捉えたものを伝える、著者の物語はあたたかい。

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