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ブックガイド「近代日本の文芸批評を知るための40冊」

文芸批評を知るために、明治から現代まで──
現在、批評家として活躍する3人が選んだ、
いま読んで欲しい40冊。

選者:杉田俊介/藤田直哉/矢野利裕

宇野常寛『ゼロ年代の想像力』(ハヤカワ文庫)

 宇野常寛の功績は、オタク文化、特に二次元に偏重しがちだったゼロ年代の批評において、視聴者数や影響力という観点からは無視できない「実写」、すなわちテレビドラマや仮面ライダーなどの特撮ものに批評の軸をシフトさせたことにある。また、ゼロ年代のフィクションの傾向として「バトルロワイヤル」ものがあると看破し、新自由主義との関係から論じたこともまた、彼の批評家としての重大な功績である。だが、次著『リトル・ピープルの時代』において、村上春樹を貶し、仮面ライダーを持ち上げるという、単純極まりない「価値転倒」の身振りを行って以降、彼の思想には一貫性が見えない。AKB48を論じ、TVやラジオに出演することなどに活動を転換したのは、好意的に見れば現在の批評家がそうしなければ生きられない悲痛さの体現であるし、悪意的に見れば、単なる軽薄さである。自身の行動を説明する理論的な強度のある「批評」の書物を、個人的にはまた読みたくもある。(藤田)

福嶋亮大『復興文化論 日本的創造の系譜』(青土社)

 何らかの傷を抱えているという点において、私たちは「ほとんど唯一の存在論的な共通項」を持ち、そこには「人間どうしの新たな結合と共鳴の可能性」がある、とする本書は、日本文化の本領を復興期に見る。「復興」という観点から編み直された日本文化論は、従来的な日本文化の系譜からは見えなかった側面を浮き彫りにするだろう。とくに、「西洋の自然主義的なリアリズム」とは異なる「観客視点のリアリズム」の指摘は、日本の文化史に新たな光を当てている。本書が画期的なのは、近代以前/以後という時代的な区分や文学/サブカルチャーというジャンル的な区分を越えて、日本文化を捉えたことだ。だからこそ、柿本人麻呂から村上春樹までが、同じ系譜のなかに存在する。ところで、本書にも書かれているが、「復興文化論」という構想の元には、京都系の山崎正和がいる。京都出身の福嶋は、批評史的に言えば、いつしか消えてしまった(『批評空間』の隆盛あたりか)京都的知性を引き継いだ存在であり、『復興文化論』の試みは、その意味でも重要である。(矢野)

「すばる」2017.4月号

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