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ブックガイド「近代日本の文芸批評を知るための40冊」

文芸批評を知るために、明治から現代まで──
現在、批評家として活躍する3人が選んだ、
いま読んで欲しい40冊。

選者:杉田俊介/藤田直哉/矢野利裕

安藤礼二『場所と産霊 近代日本思想史』(講談社)

「近代日本思想史」と銘打っているが、論じられる領域が日本にとどまることはない。少なくとも、その淵源には「アメリカ」があるし、その「アメリカ」も、短くない歴史のなかで「雑種」性を抱えている。本書は、そのようなグローバルな思想的交通の先に、近代日本思想を捉えようとする。仏教とプラグマティズムの交点として鈴木大拙を見出す、という鮮烈な鈴木大拙論も、そのような視点からなされている。本書が論じるのは、言葉や表現が発生する、その根源的な地点についてである。安藤は、ボードレールの詩的言語も、ボルヘスの「図書館」も、スウェーデンボルグの神秘思想も、南方熊楠の「曼荼羅」も、鈴木大拙の「霊性」も、そのような地点として大胆に把捉する。世界各地の思想について論じ、縦横無尽に結び付けていく本書は、それ自体が「多」であり「一」であろうとしているようだ。安藤の登場は、中沢新一以来と言うべきか、日本においては久々の、神秘主義的な立場を打ち出した文芸批評の登場だった。(矢野)

大澤信亮『神的批評』(新潮社)

 宮澤賢治、柄谷行人、柳田國男、北大路魯山人の四人を批評する。近代文学はとっくに終わった。ジャンルとしての文芸批評も滅亡した。そう言われて久しいが、たとえばイエスの宗教はユダヤ教の批評として始まり、釈尊の教えは欲望の内省として始まった。そして聖書や経典、物語たちの無数のn次創作として伝播してきた。ならば内省=批評は千年単位のスケールをもつはずだ。いや、そもそも、人類の誕生が言語と共にあり、生命の誕生が内面性(自己言及)と共にあるならば—。大澤の批評は、せせこましく閉じがちな我々の思考を叩き割って、神秘すれすれの場所で、批評の無限的な自由を開闢する。だが同時に耳をすまそう。誰よりも優しく、誰よりも目の前の他人を愛さんとしている彼の優しさに。「神的」とは、そんな神々の山巓と虫けらの地表を両極的に(しかも他者の言葉に貫かれながら)生ききることであり、実はそうした神になることは、我々には等しく許されているのである。(杉田)

「すばる」2017.10月号

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