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ブックガイド「近代日本の文芸批評を知るための40冊」

文芸批評を知るために、明治から現代まで──
現在、批評家として活躍する3人が選んだ、
いま読んで欲しい40冊。

選者:杉田俊介/藤田直哉/矢野利裕

大塚英志『「彼女たち」の連合赤軍 サブカルチャーと戦後民主主義』(角川文庫)

 サブカルチャーとおたくとフェミニズムと国家の批評が交錯する、大塚批評の傑作。大塚は連合赤軍事件の中に、左翼男性/おたく男性がひそかに分かち合う性的暴力の原型を見出す(特に赤軍派の森恒夫に対する共感と批判)。他方で、女性指導者の永田洋子が獄中で描いた乙女ちっくイラストは、萩尾望都・大島弓子ら二四年組の少女まんがや雑誌「an・an」などの「かわいい」カルチャーとも共鳴するものであり、それらは八〇年代に「フェミニズム的なもの」として花開いた。成熟した消費社会の中では、純文学もサブカルも政治的言説も(憲法の文面すらも)フラットな商品=物語になっていくが、むしろそこに戦後民主主義のポテンシャルがあり、そこにかつての大塚が夢見たおたく批評の使命があった。すなわち強くマッチョな近代化の道ではなく、未熟さや少女らしさを押し殺さずに成熟していく、という日本的な成熟の夢が―儚いものや小さなもの、キャラクターやファンシーグッズに生かされながら。それを悲しい夢として片付けられるとは思いたくない。(杉田)

福田和也『日本の家郷』(洋泉社MC新書)

 本書は、日本の文学が思考/試行する場所としての「日本」を徹底的に抉り出す。それは、実体としての「日本」ではなく、「みやび」というありかたに代表されるような、「膨大な生成過程」としての「日本」のことである。萩原朔太郎という「モダニズムを生き抜いた詩人」が、そのすえにたどり着く文語詠嘆調。保田與重郎が古典に見る「何処でもない場所」。福田が見据えるのは、そのような空無の場所としての「日本」である。実体としての「日本」を想定しないという点で、本書は、同時代の左派によるナショナリズム批判と歩みを揃える。しかし、だからこそ、そこで見出されたポストモダンな「日本」のありかたは、強い。福田からすれば、萩原朔太郎や保田與重郎の「日本」は、さまざまな「現実」的困難をくぐり抜けた先に見出されたものであり、「現実」に負けない強度を持っている。そして、「日本」と向き合おうとする福田の批評自体もまた、「現実」に負ける気など毛頭ない。有名な「批評は、一個の、独立した作品である」(『甘美な人生』)という福田の宣言は、その地点から捉えるべきである。(矢野)

「すばる」2017.4月号

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