沼田真佑「夭折の女子の顔」。中学が厭で登校をやめた「ぼく」は、あずけられた盛岡の叔母宅で思わぬ同居者と出会う。大人以前の女性を描いた、芥川賞作家の新境地。
椎名誠「母の大作戦」。父を亡くし、この先の生計をたてるため母が考えたのは「舞踊教室」を始めることだった。一方、6年生になったシーナ少年は電気店の店頭テレビに映るプロレスに夢中になっていた。
特集「対話からはじまる」。私たちは今、どこに向かっているのか。あの人の意見を聞きたい。一緒に考えてみたい。そうやって生まれた5つのダイアローグ。そして8人の作家が短編によって「対話」という行為そのものを考える。対談は、石川健治+姜尚中「象徴としての天皇と日本国憲法──今上天皇の「退位」を巡る考察」、森田真生+岡本啓「生まれる不思議、生きる矛盾」、竹信三恵子+田中俊之「命、生活、人生を守る新しい働き方」、D・E・リップシュタット+木村草太「否定論者を否定するには」、夏目房之介+周令飛「孫たちが語り合う漱石と魯迅」。短編は、上田岳弘「愛してるって言ったじゃん?」、円城塔「源氏小町」、高橋源一郎「詩の授業」、多和田葉子「ヤジロベイの対話」、津村記久子「名を匿う」、橋本治「対話型対戦ゲーム「ネゴシエーター」」、星野智幸「ワン・ボイス」、山崎ナオコーラ「笑いが止まらない」。
すばるクリティークは、浜崎洋介「観念的な、あまりに観念的な──戦後批評の「弱さ」について」。戦後日本人の「弱さ」と「アメリカの影」をキーワードに江藤淳、吉本隆明、柄谷行人、加藤典洋の批評などを再読する。